ごあいさつ
岩立フォークテキスタイルミュージアムは、館長 岩立広子が長年収集した染織品を基礎に開設された、小さな美術館です。
1965年の中南米に始まり、インドへの旅から本格的な収集が行われました。多彩な文化を持つインドの、名もなき民が生み出す「大地の布」の美しさに魅せられ、情報の全くない時代、「車窓から見た女性たちのスカートの柄に惹かれ、近くの染め場を訪ねる」 といった、手さぐりの出発でした。
現地の人々や風土に触れ、暮らしの中にある染織品を収集し、およそ50年間、インドを中心に世界各地を訪れました。
現在、インドの収集品が約4000点、その他の国が約4000点、計8000点余りの染織品を所蔵しています。
手間暇を惜しまず、労力を顧みず作られた、かつての美しい布に実際に出会える美術館です。
※現在、定期的な企画展示は行っていません。
館長・岩立広子より
私の育った時代は戦後の物のない時代でいつもゼロからの出発でした。
中学に入学した時も着る物がなく、母のセルの着物を解いて自分で作りました。
大学では染織を選び工芸科に進んだものの将来は不安でしたが、旅で見つけた布を追い求め、それが生涯の仕事に繋がりました。
1965年、憧れのペルーに着き、1000年もの時を経た古代布を沢山見ました。
今だに新鮮な輝きを失っていない、永遠に古くならない布を見つけるのが、自分の使命の様に思えました。5年後、5000年の歴史を誇る染織の国、インドを訪ねましたが、広大なインドを知るには40年の歳月でも足りず、今だに終わりのない旅を続けています。
インドから更に影響を受けた国々を辿ると、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュ、中央アジアの国々、イラン、トルコ、シリア、そしてタイ、インドネシア、ミャンマー、ラオス、ブータン、中国と、果てしなく広がり2009年、収集品を展示する小さな美術館を開館しました。集め始めた時代はインドも、その周辺国もまだ貧しく、本当の手仕事が日常に見られる最後の時代でした。
私の手元に引き寄せられた布たちは、厳しい工業化の波をくぐり抜けて生き延びた、本当に貴重な財産です。
自分の目と足と世界中の人々に支えられた美術館です。
心を込めて次世代に渡したいと思います。
インド ラージャスタン州、プシュカルのラクダ市 1984年
出版物
「インド 砂漠の民と美」
用美社 1984年出版
(絶版)
「インド 大地の布」
求龍堂 2007年出版
当館にて販売中
友の会
2020年をもって、友の会は終了いたしました。
会員の皆様におかれましては、長年にわたって会費やご寄付を頂き、また心温まるメッセージ を多数お寄せ頂き、誠にありがとうございました。これまでのご支援、ご協力を深く感謝申し 上げます。