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「刺繍 -接ぎ合わせから始まったテキスタイル」
2010年2月11日 - 5月1日

古代、人々は動物の皮を接ぎ合わせて衣服や靴を作りました。針を使ってかがった事が刺繍の始まりと云われています。刺繍が盛んな地域は不思議と遊牧民の世界に集中しています。例えばインドでは刺繍が盛んなのは北西インドの砂漠地帯や山岳地帯に集中しており、南インドや東インドではほとんど見る事が出来ません。他のアジアの国々を見てもインドネシア、タイ、ラオス、ベトナム等、刺繍はほとんどありません。例外は中国南部から南下して住みついた部族民達でそれぞれの国の奥地で刺繍を続けています。
インドより西のパキスタン、アフガニスターン、イラン、トルコ、中央アジアの国々等、遊牧文化の残る所に素晴らしい刺繍が残されています。刺繍はそれぞれの部族のシンボル、魔除けや豊穣を意味する文様を表す為に使われる様になります。晴れの日、婚礼時には特別、贅を尽くした衣装が作られ婚礼の持参品として一生分の衣装や袋物、壁掛け等が作られました。母親は子供の無病息災を祈って長命の老人の衣服を少しずつもらって接ぎ合わせ、魔除けにしたりしました。刺繍にはこの様に女性が家族の為にこつこつと農閑期や家事の合間に刺すものと王族や富裕層の為に刺繍専門の職人の絹サテン地に絹糸や銀糸を使った豪華なものがありました。また、家庭で婦人達の手で作られる物の中に使用済みの衣装を再利用して作り上げるカンタやパッチワークがあります。ベンガル州で作られたカンタ(表面)は使い古しの白のサリーや腰巻きを4〜5枚重ねて縫いしめ、大きな樹木や鳥等、見近な素材を刺繍したものでリサイクルの枠を超えた豊かな創造性があります。日本でも東北地方の刺子は、木綿が貴重だった頃、少しでも丈夫に暖かくと思って刺した布ですが、それが更にボロになり、パッチを重ねたもので今ではそれがアートの一つとして注目をあび、ボロが文字通りBOROの文字で外国でも通用するものになりました。しかし、カンタにしろ日本の刺子にしろ気の遠くなる様な時間を使っていますが、それは労の多い仕事と云うより、むしろ女性にとっては貴重な創造の喜びをかみしめる楽しい一時でもあったと思われます。