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「更紗 -木版、手描きのテキスタイル」
2010年5月13日 - 7月31日

 今回のチラシ(表)の更紗は、400年の伝統を誇るラージャスターンの文様を故ナライン氏の息子スーラージィが、父親の残した古い版を使って再現したものです。中の写真は、彼の新妻が木版を押していて、膝の上の子供は後継者のディパック氏です(1983年写す)。  1970年、私は憧れの更紗を夢見て渡印したものの、都市部では全く見る事が出来ず、やっとジャイプールの下町の曲がりくねった一角でトントンと版を押す軽快な音色に足を止め、小さな版を丹念に押印する様子に見とれてました。出来上がった仕事を見せてもらい、数枚買いたいと思って選んでいると、これは版のムラが多いので買わない様にと、あまりの正直さにあきれていると、仕事の行程や文様の名前、その由来等を丁寧に説明してくださいました。その時、毎週土曜日の早朝、旧市街のチョティチョパルの角の寺院の屋上で市が開かれ、近隣の染物村から、一週間の間に染められた布を濡れたまま肩に担いで、地面に拡げられ、商いが始まると聞きました。何だか採れたての野菜が商われている様で心が弾みます。商人達は真剣に版の押し方、色の出具合い、布地等確かめ、値段が決まると肩に担いで出て行きます。皆の後ろから村の染物の特徴を調べ、どのカーストの人が使うスカートかベールかを調べ、場所を聞き出します。皆、ジャイプールから半径30kmから50km位の距離にある村から来てました。次々に訪ねたい村が見つかり楽しみでした。
 その後、アフガニスタンのタシクルガンで世界最古のバザールを訪ねた時、アリザリン塗りの更紗を見つけ、びっくりしました。その近辺で1950年代まで作られていたそうです。もっと西のウズベキスターンのコタツカバー「ナボイカ」も同様な木版染めですし、トルコの薄いガーゼにオヤのついたスカーフも木版染の美しいものです。シリアのダマスカスのスークの入り口近くでも、職人達が素朴な木版でベールを染めているのに驚きました。インドネシア、タイで使われた古渡り更紗や黒船でもたらされた日本向けの更紗が、大名や貴族の衣装になったり、お茶の世界では小布まで接ぎ合わされ、日本のファッションにも多大な影響をもたらしました。  更紗は、女性にとって永遠の憧れの布と云っても良いでしょう。