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「縞と格子 -織から生まれた直線のデザイン」
2010年11月18日 - 2011年2月19日

 昔からあって、今も新鮮なストライプとチェック。永遠のベイシックです。初めて織る事を知った人間が最初に試みた文様が縞と格子柄です。経糸を整経する時、色糸を加えただけで経縞が出来、緯糸にも色糸を加えれば格子になります。最も簡単な技法ですが無限の文様が出来、永年、庶民の普段着として、又、人目を引く大胆な意匠として愛されて来ました。直線という限られた技法の制約で返って余分なものが削ぎ落とされ、強い個性と同時にそのシンプルさが他を引き立てました。民族が受け継いで来た歴史ある固有の美しい縞と国籍のない、何処にでも使われた縞があります。
 初めてインド北部のヒマラヤ山麓の村を訪ねた時、9月の終わりだったと思いますが、美しかった紅葉の日々が突然、小雨の降る冬の到来に外の景色はグレーに沈み、寒さに震えて、広場に面したレストランで雨宿りをしました。ふとガラス窓の外を行き交うウールのパトゥ(巻衣装)を纏った村の女性に目を奪われました。厚手のホームスパンのグレーに大柄の格子、両端に真っ赤な縁取り、北国の素朴な格子にこちらの気持ちも温かくなりました。
 又、その昔、アフガニスタンのバザールで見つけたトルクメン族の子供服は、地味な縞の布地を接ぎ合わせたものでしたが、子供の健やかな成長を願って、長寿のお年寄りから譲られた布地に更に、魔除けの子安貝や刺繍で飾ったものでした。地味な縞が返って、子供の愛らしさを引きたてています。アラチャと呼ばれる細かい縞は、藍と白、えんじと黒、黄色と黒、男性の綿入れのチャパン(外衣)や女性の長衣に使われたものです。
 バングラデシュの労働者達が頭や腰に巻き付ける木綿のガムチャは、残糸を使ったカラフルな縞や格子の一枚布で、汗を拭いたり荷物を包んだり便利で安価な庶民の布です。日本にも美しい縞や格子の織物は木綿の普及と共に増え、江戸時代、写楽の浮世絵等に粋な着物姿が見られます。織元に残された縞帖には、数限りないサンプルが集められ、縞にはそれぞ美しい名前が付けられている事も驚きです。いつかこの縞と格子の布だけを集めて展示をしてみたいと思っていました。
 今回は南インドの格子サリー、両端の縞の美しいパトラ サリー、縞の長衣やマシュルーのスカート。山の民が巻き付けたパトゥ、カシュミール州のショール。トルクメン族の子供服やショール。アフリカのケンテクロス(10cm巾の織布をつないだ巻衣装)。ラフィア繊維の格子のアップリケや衣装はアフリカならではの大胆な発想が見られます。その他、プレインカの出土の縞のコカ袋、格子の飾り布など。