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「柚木沙弥郎の世界 -染色・版画・ガラス絵・絵本など」
2013年1月10日 - 4月13日

 今回は私の恩師であり、生涯の恩人でもある柚木沙弥郎先生の作品展です。
 戦後の混乱期、故郷の岡山で民芸に出合い、芹沢けい介師の和紙のカレンダーの美しさに目を奪われ門をたたき、師の勧めでいきなり、浜松の紺屋に住み込みで型染の実際を習得したそうです。その後、女子美術大学の工芸科で教職につき乍ら、用の美を目指し、新しい型染を国画会や個展で発表し、その活動は版画やガラス絵、絵本の挿絵にも広がっています。私が学生の頃は、日本民藝館で沖縄の紅型を型染のお手本として見せて頂き、その後は下町で手拭いや浴衣を染める注染の工場を見学し、実際その時使っていた注染染めの機械が学校にも導入されました。先生も私達も初めてで、4mの布を用意し、型紙を張った木枠を布にのせ屏風畳みにしながら糊付けをし、上から染料を注ぎ、下の箱の空気をコンプレッサーで一気に抜いて染料を下まで通す仕組みです。布を広げると折った所の文様が対照になって出て来て、思わぬ形に歓声を上げたのですが、同時にコンプレッサーがうまく作動しない時はムラになる事もあり、ハラハラドキドキでした。失敗した布は絞りを加えたり、型を置いたり工夫をするとかえって面白くなったり、楽しい経験でした。その様な中で先生は、着実に今迄の型染の伝統を新しい大胆な発想で、独自の世界を築かれました。簡潔でバランス良く、美しい色彩は天性のものかも知れません。そして、どこかにユーモアを忘れず、型なのに柔らかく温かいものが根底を流れています。作品は個展の折々に少しずつ譲って頂き、最初は大切にしまっておいたの
ですが最近は堂々と居間に飾らせて頂き、毎日楽しく眺めております。  90歳のお誕生日を記念して皆様に公開し、先生の心のメッセージをお伝えしたいと思いました。同時に、当美術館の設立とコレクションの収集は、先生の絶えざる励ましと御助力なくしては 存在しなかったので、重ねて御礼を申し上げます。