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「アフリカの藍、日本の藍 - 大胆さと繊細の対比」

2018年8月2日 - 11月10日

 力強く大胆なアフリカ、やさしく端正な日本。恐らく世界中で藍ほど多くの国々で使われ、愛された染料は他にはないだろう。中国の西端、ウルムチに、タクラマカン沙漠で出土されたミイラの博物館がちょうど開館された時だった。金髪の女性のミイラが藍地に白の七つ紋を散りばめた布を纏っていたのを見た。2001年9月、私が見た最古の藍である。私が訪れたアジアの国々、中央アジア、中南米、ヨーロッパなど、何処に行っても、藍は日常着にも晴着にも使われ、それぞれ思い出深いものがあった。

 私が日本の藍を集め出したのは大方の他国の藍の収集品が終わった頃である。戦中戦後、目にする木綿は藍ばかりだったせいか、藍は私にとって貧しさの象徴の様な思いがあった。しかし、ボロボロになった藍のつぎだらけの布団地が、Boroとなって外国人を喜ばせ、そのうち私達も、つぎはぎ布の古着の面白さに、美しさを見る様になった。昨年、藍染職人の田中昭夫氏の素晴らしい藍の仕事を、感銘を受けた津田さんと菊田さんの御好意で御寄贈頂いた。この寄贈をきっかけに今展の藍の企画が生まれた。

 アフリカの藍染めは、今回講師を引き受けて下さった小川弘氏が、ヨーロッパの植民地であったアフリカから持ち込まれた、生活の中のアートに衝撃を受け、その後御自身がアフリカに入られ、染織品、日常雑貨、宗教儀礼用の仮面等、今迄、日本では知られる事のなかった逸品を日本に持ち込まれ紹介された。私が最初に拝見したのが1982年であるが、アフリカの布との出会いは、私の人生観が変わる程の衝撃で、コレクションは急速に膨らんでいった。ハリマッタンという砂嵐が吹き荒れると、あたり一面、黄塵に包まれ、目の中、口の中、衣服の隅々まで入り込み身動きが出来なくなる。そう云う所で作られた品は柔なはずがない。どの布にも緻密な労力が、大らかなデザインの陰に潜んでいる。川田順造の「曠野から」に始まり、ディネーセンの描いた「アフリカの日々」に出てくる、キクユ族のカマンテ。アンジェラ フィッシャーの写真集「Adorne Africa」等、お勧めしたい。

岩立 広子