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「世界の原始布」

2019年11月28日 - 2020年3月14日

 今回は「原始布」というテーマで、アフリカ・日本をはじめ、世界各地の草木から採集した繊維の布を展示します。表紙に使われているクレーの絵の様な文様の布は、中央アフリカに位置するコンゴ民主共和国のクバ王国、ブショング族のものです。ンチャックと呼ばれ女性の巻衣装、死装束にも使われる大事な布で、一生かかっても数枚しか作ることができないそうです。1980年代に入り、集め始めたアフリカの染織品は、どれもダイナミックな手仕事の面白さがあり、幾何文が圧倒的で、インドの草花を主とする具象文を見慣れた目には、まるでジャズの世界に引き込まれた様な新鮮な驚きでした。また、ラフィア椰子の繊維から作られるこの布を完成させるまでの一連の仕事は、村の子どもから大人までたくさんの人々が関わって作られます。その独特で普遍的な文様を支えているのはラフィアの素材としての強さと、ブショングの人々が送る日々の営みの逞しさではないでしょうか。

 いっぽう日本でも、かつて木綿が普及する以前、大麻をはじめ苧麻や葛、榀、藤、芭蕉といった各地の風土に活かされた繊維が使われていました。この豊富な素材と丹精で美しい手仕事を再認識し、自国の染織品を集めるようになったのはインドや他国の収集が終わってからでした。収集を始めると、それまでは堅苦しいと思っていた「こぎん」の文様も、味わいや面白さが見えてきました。自然布と呼ばれるこれらの布の数々はすでに過去のものとなっているところもありますが、今日でも技術が受け継がれている様子を見ると、布の実用と同時になにか精神的な必然性があるような気がします。現代において希薄になりつつある自然と人間の豊かな関係を、原始布を見つめることで、いま一度考え直すきっかけになればと思います。